はじめに

インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどでウイルスという言葉はほとんどの方が知っていると思います。

しかしウイルスがどんなものであるかを説明できる方はほとんどいないでしょう。

今回はウイルスについて分かりやすく解説します。

このブログを読めばあなたは「ウイルスってなに?」という質問に答えられるようになります。

ウイルスとは

ウイルスはタンパク質の殻の中遺伝子(DNAまたはRNA)のみが存在している、肉眼では確認できない微生物の一種です。単純な構造なため、自分の力で増えたり、栄養を取り込んでエネルギーを産生したりできないため、生物ではないとする考えもあります。

よく混同される微生物に細菌がありますが、細菌は一つの細胞として存在しており、自分自身で分裂・増殖し栄養を取り込んでエネルギーを産生できる立派な生物です。大きさもウイルスの数10倍~数100倍もあり、まったく別物です。

ウイルスはとても小さいため、存在が確認されたのはわずか100年ほど前の話です。

ウイルスは生物以外にも、植物、細菌、カビなどに感染します。

感染した後、害を及ぼすウイルスを病原体と呼びます。

病原体となるウイルスは、風邪や胃腸炎などの原因となる身近なものから、天然痘ウイルスや狂犬病ウイルス、エボラウイルスなどのような致死率の高いものまで様々存在します。

ウイルスは約3万種類確認されており、そのうち哺乳類や鳥類に感染するのは650種ほどです。

実際はウイルスごとに亜種が複数存在しており、亜種を含めると相当な種類のウイルスが存在しています。

ウイルスは自分の力では増殖できないため、感染した細胞に侵入し自分の遺伝子を組み込み、自分の分身を作らせ増殖します。

その過程は次の通りです。

  1. 感染した細胞に引っ付く(吸着
  2. 細胞内に侵入する
  3. ウイルスの遺伝子が露出する(脱殻
  4. 遺伝子とタンパク質が複製される
  5. ウイルスのコピーが完成し細胞外に放出される(成熟・出芽・遊離
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福山市医師会HPより転用

ウイルスはなぜ有害なのか

ウイルスが遊離する際、感染された細胞は死滅します

放出したウイルスはさらに他の細胞に感染し複製・遊離され、次々細胞を死滅させていきます。

そのためウイルス感染すると体が弱り、場合によっては命が失われてしまいます。

ウイルスの種類によって症状は様々です。

インフルエンザウイルスやコロナウイルス、ライノウイルスなどの風邪症状を起こすウイルスは、鼻やノドの粘膜に吸着・侵入しやすい能力を持っています。そのため鼻やノドで増殖し細胞を破壊し、鼻やノドの症状が現れます。

ノロウイルスやロタウイルスなどの胃腸炎を起こすウイルスは、胃腸の粘膜に吸着・侵入しやすい能力を持っています。胃腸の粘膜細胞が破壊され、下痢や下血などの症状が出現します。

エボラウイルスは粘膜や傷口から侵入し、免疫細胞に吸着・侵入して増殖した後、血管や臓器の細胞にも侵入します。そのため全身から出血を起こすエボラ出血熱という致死率の高い病気を発症してしまいます。

他にも肝臓や皮膚、脳、脊髄など全身の様々な臓器で増殖するウイルスがいます。

このようにウイルスの種類によって吸着・侵入つまり感染しやすい細胞が決まっており、感染する細胞によって症状は様々です。

ウイルスに対する治療

抗生物質が有効だと思っている人が多いですが、抗生物質は一般的に抗菌薬と呼ばれるように細菌に対抗する薬です。そのためウイルスに対して抗生物質は効果がありません。

ウイルスに対する薬は抗ウイルス薬と呼びます。ウイルスは非常に小さいため治療薬の開発が困難です。そのためほとんどのウイルスに対して有効な抗ウイルス薬はありません。

インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、エイズウイルス、C型ウイルスに対しては抗ウイルス薬があります。

治療薬ではありませんが、ウイルスの複製を遅らせる物質を模したインターフェロンという薬があります。B型肝炎、C型肝炎、尖圭コンジローマに対して効果が期待できます。

ウイルス感染予防

ウイルスによって感染予防法は変わりますが、以下のようなものがあります。

  • 石けんでの手洗い、アルコール消毒を行う
  • マスクを着用する
  • 適切に準備され調理された食べものや飲みものだけを口にする
  • 感染者や、感染者によって汚染された物との接触を避ける
  • くしゃみやせきをするときは、ティッシュなどで完全に口や鼻を覆うようにする
  • 安全な性行為をする(性感染症予防)
  • 蚊やダニ、他の節足動物による刺咬を予防する

他にワクチンによる予防法があります。本来のワクチンは弱毒化したウイルスを注射することで免疫細胞にウイルスを記憶させ、防御力を高めるものを指します。

新型コロナウイルスに対して開発されたDNAワクチンやRNAワクチンは本来のワクチンとは別物です。

以下のウイルスに対するワクチンがあります。

  • A型肝炎
  • B型肝炎
  • ヒトパピローマウイルス(HPV)
  • インフルエンザ
  • 日本脳炎(脳の炎症)
  • 麻疹・ムンプス・風疹混合
  • ポリオ
  • 狂犬病
  • ロタウイルス
  • 水痘(水ぼうそう)
  • 帯状疱疹
  • 黄熱

ワクチンは効果の高いものと低いものがあります。効果の高いものであれば生涯に渡って免疫能力を獲得できます。いっぽうでインフルエンザワクチンのようにあまり効果が期待できないものもあります。