はじめに
厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」(平成27年度)より算出すると、75歳以上の3,842,000人(23.5%)が要介護となっており、寝たきりに近い要介護4、5の人だけでも120,000人もいます。
寝たきりになると、思うような生活を送れなくなるため自分らしく生きることができなくなります。人間としての尊厳が奪われるためとても辛いものです。
そればかりではありません。家族がつきっきりで介護をしなければならないため仕事を辞めなければならなくなったり、医療保険や介護保険などの社会保障費の歳出が増大するといった社会的問題にも発展します。
今回は日本の未来にも影響する、寝たきりを防ぐ方法についてお話します。
今回の記事をきっかけに寝たきりの人が少しでも減って、日本の未来が少しだけでも明るくなればと思います。
寝たきりになるのは歩けないからではない
あなたは寝たきりになる状態とは、歩けなくなることだと思っていませんか。
実は歩けるのに寝たきりになってしまうことがあります。
なぜならば寝たきりになる原因は歩けなくなるからではなく、立ち上がることができなくなるからです。
立ち上がる動作というのは、実は下半身の力を最も必要とします。なぜならば重心を重力に逆らって持ち上げる必要があるからです。
椅子やソファー、ベッドの端から立ち上がる場合でも、約40㎝ほど重心を重力に逆らって移動させる必要があります。
床から立ち上がろうとすればさらに倍以上の力が必要になります。
いっぽう歩く動作というのは重心の移動はないので、立ち上がる動作に比べて非常に少ない力しか必要としません。
立ち上がれない人を介助して立たせると意外と歩けたりします。歩けるのに立ち上がれず寝たきりになってしまうのです。
ですから寝たきりにならないためには、立ち上がりを維持することが重要となります。
立ち上がりを維持するために
立ち上がりを維持するためには、環境、運動で対応する必要があります。
環境
床からの立ち上がりを維持するためには、安定した台やテーブルなどを設置して重心の移動をサポートする方法がオススメです。
四つ這いになってから台やテーブルに両手をついて立ち上がると、少ない労力で重心を移動させることができます。
それでも立ち上がるが困難になれば、イスやソファー、ベッドによる洋式の生活スタイルに移行しましょう。洋式の生活スタイルであれば、床から立ち上がる動作を必要としなくなります。
ベッドは電動で高さを変えられる介護用ベッドを導入すると、立ち上がりの際ベッドを高くすることで容易に立ち上がれるようになります。
運動
トレーニングとしてはハーフスクワットがお勧めですが、一番いい運動は実際に立ち上がる動作を繰り返し行うことです。
四つばいで台やテーブルに手をついて立ち上がって戻る動作を繰り返したり、イスやベッドの端から立ち上がって座る動作を繰り返したりすることが、一番の寝たきり予防になります。
運動しようと思ってもなかなかできるものではないので、トイレに行くついでに2~3回行うことを習慣にしましょう。
栄養も大事
最近話題になっているサルコペニアも寝たきりの原因になります。
サルコペニアとは一言で説明すると
「加齢による筋肉量減少」
となります。
サルコペニアを予防するには、運動と同時にアミノ酸を摂取することが重要です。
サルコペニアの人はアミノ酸が不足しています。
アミノ酸は筋肉を作ったり、ケガやキズを治すのに必要な栄養です。
アミノ酸は大豆や大豆製品(豆腐、納豆、豆乳など)、卵、魚、肉などから摂取できます。
栄養は1日3食のうち2食は肉や魚、大豆製品をメインとした食事にすることでアミノ酸をしっかり摂取してください。高齢者でも若者と同じくらい摂取することが推奨されています。
他にもビタミンD(魚、きのこなど)、多価不飽和脂肪酸(えごま油、アマニ油、チアシード、魚介類、海藻類など)の摂取を心がけることが重要です。
さいごに
寝たきりを予防することは、日本の課題となっている健康寿命延伸につながります。
ただ長生きするのではなく、元気に自立して長生きできるのが理想的な年の重ね方です。
理想を実現するために、寝たきり予防を心がけましょう。