こんにちは!

代表理事の保田です。

 

アメリカのメルク社が開発中の新型コロナウイルスに対する飲み薬が、ヨーロッパでの販売承認に向けて審査が開始されました。

 

メルク社はすでにモルヌピラビルの緊急使用許可を、米食品医薬品局(FDA)に申請しています。認められれば新型コロナ向けに開発された抗ウイルス薬としては初の飲み薬となります。

 

モルヌピラビルの安全性や効果などを評価したフェーズ2a試験の結果が論文として発表されているので、その概要をお伝えします。

モルヌピラビルは、服用されるとウイルスの遺伝子に取り込まれ、ウイルスが増殖する際に変異を起こさせます。その結果、不完全な奇形ウイルスが作られることになり、ウイルスの増殖を防ぎます。

健康な人を対象に行われた第1相臨床試験において、安全性、忍容性が確認されたため、軽度から中等度の新型コロナウイルス感染症患者を対象に第2a相試験が行われました。

 

忍容性とは

薬物によって生じることが明白な有害作用(副作用)が、被験者にとってどれだけ耐え得るかの程度を示したもの。医薬品には、多かれ少なかれ、有害作用(副作用)がつきものであるという前提にたって使われる用語である。薬物の服用によって、有害作用(副作用)が発生したとしても被験者が十分耐えられる程度であれば、「忍容性が高い(良い)薬物」となり、逆に耐えられない程のひどい有害作用が発生する場合は、「忍容性が低い薬物」となる。

公益社団法人 日本薬学会H.P.より抜粋

 

第2相試験の目的は、新型コロナウイルス感染症患者に対するモルヌピラビルの安全性、忍容性に加え、ウイルスに対する効果を評価することです。

第2相試験の対象となった方は、新型コロナウイルス感染が確認され、7日以内に症状が発現した外来患者です。モルヌピラビルまたは偽薬をランダムに割り振って与え、結果を比較しました。

投与後3日目にウイルスが分離された率は、偽薬を与えられた人たちが16.7%だったのに対し、モルヌピラビルを与えられた人たちは1.9%と、かなり低くなっていました。

欧米ではおそらくメルク社製のモルヌピラビルが承認され、インフルエンザに対するタミフルのように使われると思われます。

しかしモルヌピラビルの内服には心配な点があります。

それは前述したモルヌピラビルの作用する形式に関係します。

先ほどお話したように、モルヌピラビルはウイルスの遺伝子に取り込まれ、変異させることで効果を発現します。つまり奇形を起こさせる薬なんです。

その作用がウイルスだけにとどまるとは限りません。

人の遺伝子にも作用する可能性があります。

 

実は似た薬がすでに存在しています。

新型コロナウイルス感染症の治療薬候補として、一時注目を集めた抗インフルエンザ薬のファビピラビル(製品名「アビガン」)も同様の形式で抗ウイルス作用を発現します。アビガンは奇形を起こさせる危険性があるため、使用に注意が必要な薬です。

 

モルヌピラビルが大量に使用されることで、後に多くの問題が起こる可能性があります。

 

モルヌピラビルよりも安全な薬が日本で開発されています。

それは塩野義製薬と北海道大学の共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬です。

3CLプロテアーゼとはウイルスの増殖に必須の酵素です。3CLプロテアーゼを阻害することで、新型コロナウイルスの増殖を抑制します。この形式であれば遺伝子に影響を与える心配はありません。

9月27日に同治療薬の開発の最終段階となる臨床試験が国内で始めています。

軽症者の症状回復までの時間や無症状者の発症割合などを見た上で、年内での承認申請を目標としているとのことです。