今回は腰部脊柱管狭窄症に対する運動の有効性について解説します。
この記事を読めば、腰部脊柱管狭窄症に対する運動の有効性について知ることができます
まずは結論
まずは結論からお話します。
★腰部脊柱管狭窄症に理学療法または運動療法だけで効果があるという証拠はない
★腰部脊柱管狭窄症の症状の一部である腰殿部痛や脚の痛みについては理学療法と運動療法の組み合わせは有効
それぞれについて詳しく解説していきます。
腰部脊柱管狭窄症に理学療法または運動療法だけで効果があるという証拠はない
腰部脊柱管狭窄症に対して、薬による治療と併用して理学療法や運動療法が行われていることが多いです。
理学療法とは、病気やケガ、老化、障害などによって運動機能が低下した状態にある人の運動機能の維持・改善を目的に、運動、温熱、電気、水、光線などを用いて行われる治療法です。いわゆるリハビリのことだと思って下さい。
運動療法とは、医学的根拠に基づいて運動を行うことで障害や病気の治療を行うもので、計画的な有酸素運動(ウォーキングなど)や筋力トレーニングのことをいいます。
理学療法や運動療法だけで腰部脊柱管狭窄症の症状を改善する効果があることを示す研究結果は報告されていません。
- Bodack MP, Monteiro M:Therapeutic exercise in the treatment of patients with lumbar spinal stenosis. Clin Orthop 2001(384):144-152
- Fritz JM, Delitto A, Welch WC et al:Lumbar spinal stenosis:a review of current concepts in evaluation, management, and outcome measurements. Arch Phys Med Rehabil 1998;79(6):700-708
- Murphy DR, Hurwitz EL, Gregory AA et al:A non-surgical approach to the management of lumbar spinal stenosis:a prospective observational cohort study. BMC Musculoskelet Disord 2006;23(7):16
- Onel D, Sari H, Donmez C:Lumbar spinal stenosis:clinical/radiologic therapeutic evaluation in 145 patients. Conservative treatment or surgical intervention? Spine 1993;18(2):291-298
- Rademeyer I:Manual therapy for lumbar spinal stenosis:a comprehensive physical therapy approach. Phys Med Rehabil Clin N Am 2003;14(1):103-110, vii
- Rittenberg JD, Ross AE:Functional rehabilitation for degenerative lumbar spinal stenosis. Phys Med Rehabil Clin N Am 2003;14(1):111-120
- Simotas AC:Nonoperative treatment for lumbar spinal stenosis. Clin Orthop 2001(384):153-161
腰部脊柱管狭窄症の症状の一部である腰殿部痛や脚の痛みについては理学療法と運動療法の組み合わせは有効
Whitmanたちは、50歳以上の腰部脊柱管狭窄症60人に理学療法を行った研究結果を報告しています。
この研究では60人を
の2グループに分けました。
腰痛予防のために考えられた体操で、腹筋を強化する運動や背筋をストレッチする運動などが含まれています。
リハビリを行う理学療法士が、機械ではなく手を用いて患者さんの体を動かすことで、神経や筋肉に働きかけて治療する方法のことです。
効果を判定するために
- 自覚した改善の程度
- Oswestry Disability Index(※3)
- トレッドミル歩行テスト
- 脚の痛み
- 満足度
がどのように変化したかを比較検討しました。
腰痛と脚の痛みによって日常生活がどのくらい妨げられているかを、患者さんが自分で記入して評価する方法
その結果、腰部脊柱管狭窄症の腰やお尻の痛み、脚の痛みを和らげるのに、理学療法が有効である可能性があることが分かりました。
特に徒手理学療法、ストレッチ、トレッドミル歩行の組み合わせによる治療が効果的であることが分かりました。
この研究で
理学療法は、専門家により診断された腰部脊柱管狭窄症の腰やお尻の痛み、脚の痛みを緩和させることが可能で、理学療法と運動療法の組み合わせが短期的にはさらに効果的
であることが証明されました。
残念ながらしびれを主症状とする腰部脊柱管狭窄症や神経性跛行に関しての効果は不明です。
Whitman JM, Flynn TW, Childs JD et al:A comparison between two physical therapy treatment programs for patients with lumbar spinal stenosis-A randomized clinical trial. Spine 2006;31(22):2541-2549
★腰部脊柱管狭窄症の症状がつらい
★腰部脊柱管狭窄症に運動が有効なのか知りたい