まずは結論から
まずは結論からお伝えします。
以下の症状があれば腰部脊柱管狭窄症である可能性が高いです。
詳しく解説していきます。
腰部脊柱管狭窄症と症状の関連がどれくらいあるのかを測る指標として尤度比(ゆうどひ=likelihood ratio:LR)というものがあります。
尤度比LRとは症状と病気の関連性を表す値だと思ってください。
LRが高いほど症状と病気の関連性が高いということになります。
腰痛があって脊椎専門医を受診した40歳以上の93例(平均年齢65.3歳,女性69%)についてLRを調べた結果が方向されています。
その結果腰部脊柱管狭窄症と関連性が高い尤度比(LR)2以上は
中高齢(LR 2.5)
下肢痛(LR 2.0)
座位時の疼痛消失(LR 6.6)
座位による疼痛緩和(LR 3.1)
開脚歩行(wide-based gait)(LR 14.3)
神経症状(LR 2.1)
でした。
文献 Katz JN, Dalgas M, Stucki G et al:Degenerative lumbar spinal stenosis. Diagnostic value of the history and physical examination. Arthritis Rheum 1995;38(9):1236-1241
腰部脊柱管狭窄症の典型的な症状と言われている「歩行時の症状増悪」のLRは意外にも1.0と低いという結果になりました。
似た症状が出る病気
腰部脊柱管狭窄症の特徴である『休み休みじゃないと歩けない(間欠性跛行)』という症状は、足に向かう動脈の血流が悪くなる病気でもあらわれます。
見分け方として、動脈の血流が悪くなってあらわれる間欠性跛行は
姿勢と関係せず立ち止まるだけで脚の痛みが軽くなる
という特徴があります。
医師が足の動脈の血流が悪いと疑った際、足背動脈という足の甲を走る動脈の拍動を確認したり、足関節上腕血圧比(ankle brachial pressure index:ABI)という検査を行って血管の詰まり具合を判断します。
ただし腰部脊柱管狭窄症と動脈の病気両方を合併していることもあるので注意が必要です。
腰部脊柱管狭窄症を診断するツール
日本国内の複数の医療機関が合同で行った研究で、治療の必要な腰部脊柱管狭窄症の患者さんを選び出すツールが開発されました。(表1)
身体所見のABI、ATRは医師による判断が必要ですが、他は自分で判断できるので自己診断する助けになります。
それぞれの項目で選んだ選択肢の後ろにある( )内の数字が点数になります。
合計点数を計算して、7点以上であれば腰部脊柱管狭窄症である可能性が高いです。
ABI、ATRの二項目を除いた点数であれば、5点以上で腰部脊柱管狭窄症を疑っていいでしょう。
分かりにくい用語について説明します。
下肢:太ももの付け根から足の指先までを指します。
間欠跛行:休み休みじゃないと歩けない状態
立位:立っている状態
前屈:前かがみになる
後屈:腰を反らす
SLRテスト:仰向けに寝て脚を膝を曲げずに真っすぐ上げていき、上がらなければSLAテスト陽性です。
SLRテスト陽性の場合は腰椎椎間板ヘルニアが疑われるので、得点はマイナス2点となります。