腰部脊柱管狭窄症の経過
まずは結論からお伝えします。
それぞれについて詳しく解説します。
①軽度または中等度の人たちのうち、1/3ないし1/2が自然経過良好
Amundsenらは、症状が軽度の手術をしなかった人たちの経過を10年後に確認しました。
その結果27例中15例(56%)が中等度ないし重度の痛みを訴えていた一方で、27例中12例(44%)がごく軽度ないし軽度の痛みのみを訴えていました。
文献 Amundsen T, Weber H, Nordal HJ et al:Lumbar spinal stenosis:conservative or surgical management? A prospective 10-year study. Spine 2000;25(11):1424-1435:discussion 1435-1436
Johnssonらは、腰部脊柱管狭窄症の無処置患者19例を対象とした平均31ヵ月の経過を観察した結果を報告しています。
結果として無処置患者のうち30%の患者の症状は改善し,60%の患者の症状は不変でした。
文献 Johnsson KE, Udén A, Rosén I:The effect of decompression on the natural course of spinal stenosis. A comparison of surgically treated and untreated patients. Spine 1991;16(6):615-619
②手術以外の治療を行った人は5年で約1/2の人が改善
Miyamotoらは、2〜3週の入院して手術以外の治療(腰を引っ張る牽引療法や腰の固定、ブロック注射)を行い効果を示した170例中120例を最低5年間経過をみて報告しています。
経過観察中は患者の求めに応じて,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を頓服で処方しました。
その結果、自覚症状は52例(43.3%)が改善、20例(16.7%)が不変、48例(40.0%)が悪化していました。
さらに日常生活動作を評価したところ
- 優(まったく症状のないもの)26例(21.7%)
- 良(症状を有するが,ADL障害のないもの)37例(30.8%)
- 可(ある程度障害のあるもの)35例(29.2%)
- 不可(重度の障害があるもの)22例(18.3%)
と半数以上が優、良でした。
③重度では手術に移行することが多く自然経過は不明。
ほとんどの研究で手術適応とされる重度の患者が除外されています。
そのため重度の人に対する自然経過は不明です。
④軽~中等度の人は、神経機能が急激に悪化することはまれ
腰部脊柱管狭窄症に関する文献では、軽度または中等度の患者で神経機能が急激または突発的に悪化したとの報告は見出されませんでした。
発生率はきわめて低いものと考えられます。
文献 Haig AJ, Tong HC, Yamakawa KS et al:Predictors of pain and function in persons with spinal stenosis, low back pain, and no back pain. Spine 2006;31(25):2950-2957