突然発症し命を奪ったり、大きな障害を残す病気に心臓麻痺脳卒中があります。

どちらも正式な病名ではないのですが、一般的によく知られている病気です。

心臓麻痺と言われるものには、心筋梗塞、狭心症、不整脈、弁膜症など様々な病名が含まれています。その代表例は心筋梗塞です。

心筋梗塞とは、心臓そのものに血流を送る冠動脈が詰まってしまい、心臓が機能しなくなる病気です。

脳卒中は脳梗塞や脳出血などの病気を含みます。脳梗塞は脳に血液を送る血管が詰まり、脳が損傷される病気です。脳出血は文字通り、脳で出血を起こす病気です。

1日たった5分の予防法

1日たった5分するだけで、心臓麻痺や脳卒中を予防できる方法があります。

それは呼吸筋の筋トレです。

腹筋や四肢の筋トレはしたことがあっても、呼吸筋を筋トレしたことがある人はあまりいないと思います。

しかし呼吸筋の筋トレには様々な効用があります。

効用をお伝えする前に、まずは呼吸筋の筋トレについて説明します。

医療現場では肺の手術前後や、脊髄損傷で呼吸に関わる筋肉の麻痺が表れた方に対して、呼吸リハビリというものが行われてきました。

『呼吸リハビリテーションに関するステイトメント2018年』では

「呼吸リハビリテーションとは、呼吸器に関連した病気を持つ患者が、可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため、医療者と協働的なパートシップのもとに疾患を自身で管理して、自立できるよう生涯に渡り継続して支援していくための個別化された包括的介入である。」

と定義が提唱されています。

呼吸リハビリだけで分厚い専門書があるくらい奥深いものなので詳細は割愛しますが、呼吸に関わる筋肉(横隔膜、肋間筋など)を鍛えるために、様々な方法で負荷をかけてトレーニングするものだと思ってください。

高抵抗吸気筋力トレーニング(IMST)

呼吸筋リハビリのために開発されたトレーニングのひとつに、高抵抗吸気筋力トレーニング(IMST)というものがあります。

IMSTは1980年代に重症の呼吸器疾患患者が横隔膜などの吸気筋を鍛えるために開発されました。

ハンディタイプの装置を口でくわえ、勢いよく口で呼吸します。装置は呼吸する際、抵抗を与える設計になっているため、負荷がかかります。

IMSTの効果

2021年6月29日にJournal of the American Heart Associationで発表されたコロラド大学ボルダー校Daniel H. Craigheadらの研究で、IMSTが、高齢者が心血管疾患を予防する可能性がある強力な証拠が示されました。

今回の研究では、50歳から79歳までの健康な成人で、収縮期血圧が正常値以上(120mmHg以上)の人36名を対象に調査しました。

半数は高負荷のIMST(1日30回、週6日の吸入)を6週間行い、半数は負荷を大幅に下げた吸気筋トレーニングを行いました。

6週間後の結果で、IMSTグループは収縮期血圧が平均9ポイント低下しました。

この結果は、1日30分のウォーキングを週5日行って得られる効果を上回るもので、一部の血圧降下剤の効果にも匹敵します。

さらにIMSTをやめてから6週間経っても、IMSTグループは改善を維持していました。

Craighead氏は、「IMSTは、従来の運動プログラムよりも時間効率が良いだけでなく、その効果がより長く続く可能性があることがわかりました」と述べています。

また、動脈が拡張する機能が45%改善し、血栓(心筋梗塞や脳梗塞の原因になる血の塊)の蓄積を防ぐ重要な分子である一酸化窒素のレベルが大幅に上昇することも確認できました。

さらに心筋梗塞のリスクを高める可能性のある炎症や酸化ストレスのマーカーも有意に低下していました。

IMSTは他にも認知機能改善、スポーツパフォーマンスの向上が期待できます。

1日たった5分、座ったままでもできるトレーニングで多くのメリットが期待できる素晴らしいリハビリです。

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