はじめに
あなたも肩こりになった経験が一度はあるのではないでしょうか。
肩こりになる人は非常に多く、厚生労働省の国民生活基礎調査によると、有訴者(病気やケガなどで症状がある人)は男性で2位、女性で1位となっています。
実は肩こりという言葉は病名ではなく俗称です。
そのため医療機関を受診しても、肩こりという病名はつきません。また肩こりの定義も存在しません。(病名のあるものは明確な診断基準があります。)
今回は多くの日本人が悩まされている肩こりについて解説します。
このブログを読めば、肩こりの原因を知り、どのように対策すればいいのかを理解できるようになります。
症状
肩こりの症状を言語化すると
首の後ろ側から肩の上部、肩甲骨周囲に生じる疲労感や不快感で、ときに痛みや吐き気を伴うもの。こり、はり、つっぱり、重い、板みたいなどと形容される。
といった感じです。
肩こりにおこる部位は下図のとおりです。
図のc、dは首の骨(頚椎)の関節や神経に炎症が起こったり、肩関節の動きの悪さを補うために菱形筋、肩甲挙筋が過剰に伸ばされて出現します。
図のeは肩関節を包む袋(関節包)の後ろ側が硬くなったために広背筋が過剰に伸ばされるために生じます。
図のa、bに関しては様々な原因で起こります。
肩こりにも程度があり、医療機関を受診するレベルの人は日常生活や仕事に支障が出ています。
ひどい場合は頭痛や吐き気を伴います。
原因
原因は大きく分けて7つあります。
それぞれについて説明します。
①筋肉の使い過ぎ
同じ姿勢で長時間作業をすることで筋肉に負担がかかり肩こりにになります。特に手先を使う細かい作業やパソコン作業、長時間の運転、スマホの使い過ぎなどで起こりやすいです。
②肩の病気やケガ
肩関節に何かしらの病気やケガ(腱板損傷、インピンジメント症候群など)があると、痛みを避ける動きをするため、筋肉が過剰に収縮します。その結果肩こりをおこしてしまいます。
③肩関節が固い
運動不足や五十肩などによって肩関節が固くなると、肩甲骨を必要以上に使って肩の動きを補います。その結果肩甲骨周囲の筋肉に負担がかかり肩こりになります。
④首の骨(頚椎)周囲の炎症
頚椎の間から出てくる神経は、肩甲骨周囲に分布しています。そのため頚椎で神経に炎症が起こると、肩甲骨周囲に症状があらわれます。神経が炎症を起こす原因としては使い過ぎや事故、ケガ、ヘルニアや感染など色々あります。
また7つある頚椎のつなぎ目(椎間関節)に炎症が起こっても肩こりが出現します。椎間関節に炎症が起こる原因としては使い過ぎ、事故、ケガ、老化、感染などがあります。
⑤胸の病気
心臓や血管、肺の病気が原因で肩こりが出現することがあります。心筋梗塞の最初の症状が肩こりのことは多いので、突然出現した肩こりで、吐き気や胸の苦しさを伴う場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
⑥その他の病気
眼精疲労や高血圧など様々な病気が原因で肩こりになります。
⑦心理的な問題
緊張しやすかったり完璧を求める人は、無意識に肩の力が入ってしまうため、肩こりになりやすいです。
予防
長時間同じ姿勢をとらない
同じ姿勢をとることで筋肉に負担がかかり肩こりになってしまいます。逆に同じ姿勢をとらなければ筋肉の負担が減って肩こりになりにくくなります。30分に1回は休憩をとるようにしたり、頻繁に肩甲骨や首、肩を動かして筋肉をほぐすよう心がけてください。
肩甲骨を伸ばすストレッチポールなどのグッズを利用するのもオススメです。
作業姿勢に気を付ける
目線が15度下がる姿勢だと負担がかかりにくいと言われています。軽くアゴを引く感じです。イスや机、画面の高さを調節して、目線が15度下がるようにしましょう。
枕の高さに気を付ける
前述した姿勢とも関係しますが、寝ているときの枕の高さが原因で肩こりになっている場合があります。寝起きに肩こりを自覚する場合は枕が原因である可能性が高いです。枕も目線が15度下がる姿勢になるのが理想です。目線15度下げようとすると高めの枕になります。枕は低すぎる人がほとんどです。まずはバスタオルや座布団などで高さを補ってみてください。
しっくりこないようであれば負担を軽減してくれる枕を購入しましょう。
冷やさない
クーラーや外気温によって冷やされると、肩に力が入ってしまううえに血流が悪くなり、疲労物質が溜まりやすくなります。首や肩甲骨周囲を冷やさないようにしてください。
治療
運動
首や肩甲骨をストレッチしたり、姿勢を正しくすることで、肩こりを改善できます。
温熱療法
遠赤外線や電気を当てることで血流をよくして、筋緊張を緩和し疲労物質を減らすことができます。
マッサージ
マッサージを行うことで筋緊張が緩和されます。マッサージはあん摩マッサージ指圧師や柔道整復師という国家資格を持った人が営んでいる治療院や接骨院・整骨院でやってもらうようにしましょう。(整体やカイロプラクティックなどは国家資格者ではないので注意が必要です。)
鍼灸
原因によっては鍼灸で劇的に改善することがあります。国家資格をもった鍼灸師に相談しましょう。鍼灸治療院のほか、最近は鍼灸整骨院でも鍼灸治療は受けられます。
内服・注射
整形外科外来では筋緊張を緩和させる薬や消炎鎮痛剤、湿布などを処方して症状を緩和させます。
またトリガーポイントと呼ばれる注射やブロック注射などを行います。