腰部脊柱管狭窄症によく使われる薬

腰部脊柱管狭窄症に対して医療機関で処方される薬には
  1. 痛みや炎症を抑える薬=非ステロイド性抗炎症薬(ロキソプロフェンナトリウム、セレコキシブなど)
  2. 筋肉の緊張を和らげる薬=筋弛緩薬(リンラキサー、ミオナールなど)
  3. 神経の栄養剤=ビタミンB12(メチルコバラミン、メチコバールなど)
  4. 腰の血流を良くする薬=プロスタグランジンE(オパルモンなど)
があります。

1.に関しては、腰部脊柱管狭窄症に限らず頭痛や骨折、腰痛、手術後の痛みなど、様々な痛みに対して使われます。

2.に関しては、腰痛や肩こりにもよく使われます。

3.は手足のシビレや目や耳のトラブルなど、神経が関わるもの全般に使われます。

4.は腰部脊柱管狭窄症や動脈の血流が悪くなる病気で使われます。

いずれも腰部脊柱管狭窄症の症状を緩和するのが目的であって、治すのが目的ではありません。

腰部脊柱管狭窄症に対して薬は効果的か

結論からお話すると
  • 非ステロイド性抗炎症薬筋弛緩薬ビタミンB12が腰部脊柱管狭窄症の治療に有効であるという証拠は不足しています。
  •  プロスタグランジンEは神経性跛行ならびに両下肢のしびれを伴う馬尾症状(お尻の感覚障害、尿や便の調節ができない、勃起不全など)を有する腰部脊柱管狭窄症の治療に短期間有効です。
詳しく解説していきます。

腰部脊柱管狭窄症に対する非ステロイド性抗炎症薬、筋弛緩薬、ビタミンB12の内服に対する様々な文献を検証した結果、これら薬剤が有効であるという証拠は得られませんでした。

プロスタグランジンEはどうでしょうか。

腰部脊柱管狭窄症でプロスタグランジンE(リマプロスト15 μg/日)を内服した人たちと、消炎鎮痛剤(エトドラク400 mg/日)を内服した人たちを比較した研究があります。

プロスタグランジンEを内服した人は34人、消炎鎮痛剤は32人で、8週間内服を続けました。 8週後に
  • QOL(生活の質)
  • 腰痛
  • 下肢のしびれ
  • 歩行距離
  • 主訴の改善
  • 満足度
を評価しました。 その結果

プロスタグランジンEを内服した人たちがQOL、下肢しびれ歩行距離改善がみられてました。

特に軽症の人たちがよく改善していました。 この結果から

プロスタグランジンEは腰部脊柱管狭窄症の治療に短期間は有効

という証拠が得られました。 しかしプロスタグランジンEには欠点があります。 それは血流を良くする反面、出血しやすくなるというものです。

僕が担当した患者さんでも、何もしていないのに全身に内出血を起こして重体となり、輸血をした人がいます。

そこでより安全に使用できる血流を改善する薬として、漢方薬があります。 残念ながら漢方薬に関して有効性を証明した研究はないのですが、4000年以上という長きにわたって使われ続けていることが何よりもの証明だと思います。 体力がある腰部脊柱管狭窄症の人は、牛車腎気丸桂枝茯苓丸を一緒に飲むことで症状が改善しするのでオススメです。 ただし漢方薬にも副作用はあるので、医師や薬剤師に相談のうえ、用法容量を守って内服してください。

まとめ

  • 腰部脊柱管狭窄症に対して、非ステロイド性消炎鎮痛薬、筋弛緩薬、ビタミンB12、プロスタグランジンEが使用されます。
  • 研究で効果が実証されたのはプロスタグランジンEのみです。
  • 元気な腰部脊柱管狭窄症の人は、漢方薬の牛車腎気丸、桂枝茯苓丸の組み合わせが有効です。