整形外科外来に来られる患者さんの訴えで多いもののひとつに指の第1関節がはれて痛いというものがあります。
多くの方が「リウマチではないでしょうか?」と心配して受診します。
この記事を読めば、指の第1関節に痛みが出た際セルフチェックできるようになります。
指の第一関節が痛くなる原因は大きく分けて
- 軟骨のすり減り
- 細菌の感染
- 関節リウマチ
- 腫瘍
の4つがあります。
それぞれについて詳しく解説していきます。
①軟骨のすり減り
手の指は麻痺がなければ生まれてからずっと使い続けます。人類は二足歩行を獲得したことで手の指を酷使する運命にあります。
指の関節は小さくとても繊細なので、簡単に壊れやすいです。
突き指をして指の関節が痛くなったりはれたりした経験は誰もが一度はあるはずです。
とても繊細なのに酷使される結果、指の関節は年々破壊されていきます。
指の使い方には個人差があるため、年を重ねるごとにその人の人生がにじみ出てきます。
職人さんの指、楽器を弾く人の指、農家の人の指といった具合に、整形外科医をしていると指をみるだけで職業がある程度判別できるようになってきます。
指を酷使する職業や趣味をおもちの方は、指の関節に負担がたくさんかかります。
そのため関節の軟骨がすり減りやすいです。
関節の軟骨がすり減ると動きがなめらかではなくなります。健康な軟骨の表面はツルツルで摩擦がほとんどない状態ですが、すり減ってくるとデコボコになってくるため動きが悪くなります。
デコボコしているため摩擦が起こり炎症が生じます。炎症が生じると痛みに関係する物質が分泌されます。このようにして指がはれて痛みが出るようになってきます。
手の指の第1関節(医学的には遠位指節間関節=DIP関節といいます)の軟骨がすり減って起こる指の変形をへバーデン(Heberden)結節といいます。
閉経後の女性に多いことから、女性ホルモンも影響していると考えらえています。個人的には主婦業で指に負担がかかるのも一因ではないかと思っています。男性:女性=1:10と女性が圧倒的に多いです。
男性でも農家の方や大工さん、ピアニストなど指に負担をかける人ではよく見かけます。
進行すると第1関節が出っ張ってきます。レントゲンをとると関節の隙間が狭くなっていて軟骨がすり減っているのが分かります。さらに関節面に接する骨が変形して出っ張っているのが確認できます。
症状としては痛みやはれを認めます。血液検査では異常は認めません。
老化現象のひとつなので根本的な治療はありません。基本的にはテーピングで固定して負担をかけないようにして、痛みが強い場合には痛み止めを飲んだり、湿布や塗り薬で症状を緩和します。
数年経過すると関節が固まってきて痛みが出なくなることが多いです。
あまりに痛みが強くて仕事や生活に支障があれば手術で関節を固定します。
また出っ張ってきた骨の影響で皮膚が薄くなり破けてしまうことがあり、このような場合も手術を行います。
②細菌感染
細菌が皮膚表面にできた小さな傷や血液などから侵入して第1関節に入り込んでしまうと、真っ赤に腫れあがって熱をもちます。
他の病気との違いとしては急に痛みと赤み、熱をもったはれが生じる点です。
症状が強いと熱が出ることもあります。
何歳でも起こる可能性がある病気です。
血液検査で細菌感染したときに上がる炎症マーカー(CRP、白血球、好中球)が上昇します。
抗生物質で治ることが多いですが、効果がなければ手術で関節を開いてきれいに洗う必要があります。
関節はもともと無菌の場所なので、細菌に対して抵抗力がありません。そのため一度細菌が感染するとなかなか治らず、治ったとしても関節が破壊されてしまいます。
③関節リウマチ
一般的にリウマチと呼ばれますが、正式には関節リウマチといいます。
関節リウマチは自己免疫疾患と呼ばれる病気のグループに分類されます。
自己免疫疾患とは、何らかの理由で免疫系に異常が生じ、免疫細胞が自分の体を攻撃してしまい、体に異常を生じる病気のことをいいます。
いまだに関節リウマチの原因は解明されていませんが、どのようにして関節を攻撃するかは解明されてきました。その結果、治すことはできませんが、免疫細胞の働きを調節することで病状をコントロールすることはできるようになっています。
関節リウマチの特徴のひとつに、指の第2関節や手首の症状から始まることが多いというものがあります。ただ第1関節だから関節リウマチではないと断言はできません。関節リウマチは全身のあらゆる関節に起こる可能性が高いです。
他の関節リウマチの特徴としては
- 左右に症状が出やすい
- 膝や股関節など大きな関節に症状が出やすい
- 朝は手がこわばって動かしにくい
- 関節をおさえると痛い
- 微熱やだるさを伴うことがある
といったものがあります。
④腫瘍
骨や軟骨にできる腫瘍があるため、第1関節のはれや痛みが腫瘍の場合もあります。
指にできやすい腫瘍に内軟骨種という良性腫瘍があります。
内軟骨種とは骨の内側に軟骨のような細胞が増殖してしまう病気です。
基本的には症状もなく無害ですが、腫瘍によって骨が薄くなると骨折を生じるため、その際ははれや痛みを生じます。
10歳~40歳に多いです。
内軟骨種が多発するOllier病と呼ばれる病気があり、その場合は悪性化することもあるので注意が必要です。
ごくまれではありますが骨肉腫や軟骨肉腫という悪性の腫瘍である場合があるので、レントゲンのチェックをしてもらったほうが安心です。
まとめ:痛みに加え腫れ・熱・赤みがあれば整形外科受診を
指の第一関節が痛む原因の多くは軟骨が減って生じるHeberden結節のことが多いですが、関節リウマチや感染、腫瘍の可能性もあります。
痛みに加え、関節の腫れ・熱・赤みがあれば整形外科を受診し検査を受けるようにしましょう!