ちょっと想像してみてください。もしあなたの手がしびれ続けていたらどう感じますか?
一時的なしびれであればそれほど心配しないと思います。
しかしいつまでもしびれが続く場合は脳の病気が心配になると思います。
しかし手がしびれる原因のほとんどは脳ではありません。
しびれの出る場所など特徴によってある程度原因を絞り込むことができます。
今回は手がしびれる原因を簡単に診断する方法をお伝えします。
この記事を読むことで、手のしびれの原因をおおよそ自己診断できるようになります。
次の8つの特徴によって、おおよその診断ができます。
- 手の血色が悪い
- 片手の薬指と小指がしびれる
- 片手の親指、中指、人差し指がしびれる
- 片手または両手の親指と人差し指がしびれる
- 片手または両手の中指がしびれる
- 腕をつり革をつかむ状態にするとしびれる
- 両腕・両脚がしびれる
- 片側の腕全体と脚全体がしびれる
特徴① 手の血色が悪い
手がしびれる原因には大きく分けて神経の障害と血流の障害があります。
血流の障害が原因の場合は、手が冷たく皮膚の色が青白くなるという特徴があります。
血液の流れが悪くなる原因は、血管がいたんだり、心臓の力が弱くなったり、振動する工具を長年使っていたり、ホルモンの影響を受けたりと様々です。
症状が進むと
- 痛い
- 皮ふ潰瘍(※1)ができる
といった症状も出現します。
(※1) 皮ふ潰瘍
皮ふ潰瘍とは、皮膚の表面が何らかの原因で傷害され、皮ふの深層(真皮)まで正常な組織が失われてしまう状態のことです。
ひどい場合には切断が必要になることもあります。
では具体的にどのような病気がありのか見ていきましょう。
閉塞性血管炎
バージャー病(Burger病)ともいいます。30~50歳の男性に起こりやすい病気です。ホルモンや喫煙による影響で起こると考えられています。足に起こることが多いですが、手や指にも起こります。
閉塞性動脈硬化症
中年以上の男性に多く見られます。糖尿病や高血圧によって動脈硬化になった場所に血の塊(血栓)ができて、動脈を塞いでしまうことで起こります。
動脈血栓症
手のひらで繰り返し硬いものをたたいたりして負担をかけた結果、手のひらを通る動脈に血栓ができて起こります。
動脈塞栓症
心臓の中でできた血栓が飛んで手の動脈に詰まることで起こります。心臓の病気をもっている人に起こりやすいです。
足に起こることが多いですが、腕の血管(上腕動脈)で起こることもあります。
一次性Raynaud(レイノー)症候群
手足の末端の細い動脈が突発的かつ一時的にけいれんして血液の流れが悪くなる病気をレイノー症候群といいます。このうち原因となる大本の病気がないものを一次性レイノー症候群と呼びます。
若い女性(10~20代)に起こりやすい病気です。両手の人差し指から小指までの4本の指先に症状が現れやすく、親指にはほとんど症状が出ません。
冷えたり精神的なストレスが引き金となって起こります。
血管を収縮したり緩めたりする神経の調節異常やホルモンの異常が原因だと考えられています。
二次性Raynaud(レイノー)症候群
大本になる原因があって起こるレイノー症候群を二次性レイノー症候群と呼びます。
血管内に原因がある血管内性、血管に原因がある血管壁性、血管の外に原因がある血管外性に分けられます。
それぞれのさらに大本となる原因は以下の通りです。
血管内性
寒冷凝集素と呼ばれる物質が冷えることで固まって起こる場合や、クリオグロブリンという物質が血管に詰まることで起こります。
血管壁性
閉塞性血栓血管炎や振動工具を長期間使用する結果、血管の壁に異常が生じて起こります。
特徴② 片手の薬指と小指がしびれる
この特徴がある場合は尺骨神経が圧迫される肘部管症候群や尺骨神経管症候群のほか、頚椎神経根症が疑われます。
肘部管症候群
肘の内側を通る尺骨神経の通り道が狭くなることで起こります。子供の時に上腕骨を骨折していたり、長年肘を曲げ伸ばししたりすることで起こります。尺骨神経は薬指と小指の感覚を司るほか、手の指を広げて閉じる筋肉や薬指と小指を曲げる筋肉を支配するため、握力が低下したり、箸を使いにくくなったりもします。
肘の内側を軽く叩くと薬指と小指にビリビリとくるのも特徴です。
尺骨神経管症候群
手のひらに繰り返し衝撃が加わることで薬指と小指の感覚を司る尺骨神経の通り道である尺骨神経管が狭くなりしびれが出現します。ハンマーを使う職業やラケットを使うスポーツ選手に多く見かけます。
頚椎神経根症
頚椎(首の骨)から手の神経が枝分かれしています。頚椎に変形が起こったり、首の骨と骨の間にある椎間板が出っ張ったり(椎間板ヘルニア)して神経を圧迫すると、手にしびれが出ます。
頚椎から枝分かれする8番目の神経が圧迫されると薬指と小指にしびれが出現します。症状のある側に首を傾けたり、症状がない側の斜め上を見ることで薬指と小指を含めた腕の小指側にしびれや痛みが走る場合は、頚椎神経根症の可能性が高いです。
特徴③ 片手の親指、中指、人差し指がしびれる
この特徴は正中神経が圧迫される手根管症候群のほか、頚椎神経根症が疑われます。
手根管症候群
手首の手のひら側に正中神経の通り道である手根管があります。何らかの原因で手根管が狭くなると正中神経が圧迫されます。その結果起こる一連の症状を手根管症候群と呼びます。
正中神経は親指、人差し指、中指の感覚を司るほか、親指が人差し指と一緒に物をつまむ際に使う筋肉を支配しているので、物をつまむ筋肉に力が入りにくくなります。進行すると手のひらの親指の付け根部分(母指球)がやせてきます。
手首をグーっと伸ばしたり曲げたりするとしびれが強まります。
また手根管を軽く叩くと人差し指を中心に親指や中指にビリっと響くのも特徴です。
特徴④ 片手または両手の親指と人差し指がしびれる
頚椎の6番目の神経が圧迫されると親指と人差し指を含めた腕の親指側にしびれが出現します。左右両側の神経が一緒に圧迫されると両手に症状が出ます。
症状のある側に首を傾けたり、症状がない側の斜め上を見ることでしびれや痛みが走る場合は、頚椎神経根症の可能性が高いです。
特徴⑤ 片手または両手の中指がしびれる
頚椎の7番目の神経が圧迫されると親指と人差し指を含めた腕の親指側にしびれが出現します。左右両側の神経が一緒に圧迫されると両手に症状が出ます。
症状のある側に首を傾けたり、症状がない側の斜め上を見ることでしびれや痛みが走る場合は、頚椎神経根症の可能性が高いです。
特徴⑥ 腕をつり革をつかむ状態にするとしびれる
胸郭出口症候群が疑われます。
胸郭出口症候群とは手や腕の神経の集まりである腕神経叢や鎖骨下動脈が鎖骨の下あたりで骨や筋肉によって圧迫されておこる病気です。
特徴⑦ 両腕・両脚がしびれる
手のみならず、両手両足がしびれる場合は手足の神経の束である頚髄でのトラブルが疑われます。加齢に伴う頚椎の変形や靭帯の骨化、椎間板ヘルニア、腫瘍などが原因で頚髄が圧迫されると四肢と体にしびれが出現します。運動神経も一緒に障害されることが多いため、歩きにくさや手や腕の動かしにくさを伴います。
他に神経系統の難病である可能性もあるので、脳神経の専門医や整形外科の専門医の受診を検討してください。
特徴⑧ 片側の腕全体と脚全体がしびれる
片麻痺や半身麻痺と言われる状態です。この場合は脳疾患が疑われます。脳梗塞や脳出血、脳腫瘍などを疑う必要があるので、早急に脳神経の専門医に診察してもらってください。
さいごに
今回解説したのはあくまでも簡易的な判別法です。
実際は検査をしないと確定診断できません。
①に関しては整形外科、循環器内科、血管外科
②~⑦に関しては整形外科
⑧に関しては整形外科、脳神経外科、脳神経内科または神経内科
⑨に関しては脳神経外科、脳神経内科または神経内科
を受診してください。