膝(ひざ)の軟骨がすり減って起こる変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)の人は、日本ではとても多い疾患となっています。
自覚症状がある人だけで1000万人、自覚症状がない(レントゲン画像上の変化のみ)人も合わせると3000万人もの人がいるといわれます。
赤ちゃんや子供も含めて考えても4人に1人は変形性膝関節症を患っていることになります。
ご高齢者の2~3人に1人は変形性膝関節症であると考えられます。
変形性膝関節症があると、膝に痛みが生じるため、立ったり歩いたりが辛くなります。
最終的には手術が必要になることも多いです。
そんな膝の痛みを軽くする裏ワザがあります。
それはインソール(靴の中敷き)です。
今回は変形性膝関節症について解説し、簡単に症状を緩和させるインソール(靴の中敷き)についてお話します。
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症とは、膝の軟骨や半月板、靭帯(じんたい)などがすり減って、痛みや腫れ、膝関節の動かしにくさ、変形などが起こる疾患です。
原因としては、長年体重を支え続けることによる老化現象として起こる場合と、ケガや関節炎などの後遺症で起こる場合があります。
日本人はO脚の人が多いため、膝の内側に負担がかかりやすく、内側型の変形性膝関節症が多いです。
患者の性別は、女性のほうが男性よりも1.5〜2倍多く認めます。
症状
はじめは痛みや動かしにくさで気付くことが多いです。
痛みがでる場面は、床からの立ち上がりやしゃがむ動作、階段の下り、車の乗り降りなどが多いです。
痛みが出る部位としては膝の内側が多いです。
膝を曲げ伸ばしできる範囲も徐々に狭くなってきます。
具体的には、床に膝を伸ばして座ると膝の裏に隙間ができたり、便所すわりのように膝を深く曲げることが困難になったりしてきます。
病状が進行すると、膝のお皿(膝蓋骨)の上にある袋に水が溜まって腫れたり、熱をもったりします。
さらに進行すると、関節の内側の隙間が狭くなったり、削れたりしてくるため、外見上にも変形が分かるようになります。
膝関節を支える機能が低下するため、膝が不安定になり膝崩れ(歩行時に体重がかかるとガクッと膝が抜ける感じ)が起こったりします。
歩行能力が低下するため、長距離の歩行が大変になります。特に階段の下りや下り坂では膝関節に体重の7倍の負担がかかるため、平地以外の移動は困難となります。外出をする機会が減り、閉じこもりや寝たきりのきっかけになることも多いです。
ほかの病気と見分けるポイント
関節リウマチも膝関節の痛みや腫れが起こるため見分ける必要があります。関節リウマチの場合は、両膝一緒に症状が出ることが多く、他の関節(手の指や手首など)の症状が一緒に出現したり朝起きると手がこわばっているなどの症状もあります。
夜間寝て安静にしている時も痛みがある場合は、軟骨が急激に壊死(えし)する大腿骨顆部骨壊死や骨腫瘍などの可能性があります。
レントゲンやMRI、採血検査などの精密検査をしないと分からないことが多いので、医療機関の受診が必要となります。
治療
変形性膝関節症に対しての治療は、はじめは消炎鎮痛剤(ロキソニンやカロナールなど)や外用剤(湿布や塗り薬)、関節注射(ヒアルロン酸の注入)で症状の緩和を行いますが、進行すれば人工関節や骨切り術などの手術を行います。
しかし変形性膝関節症は一種の老化現象なので、治療の基本となるのは生活する際の膝関節にかかる負担を減らすことになります。
具体的には
- 階段や段差を避ける
- 手すりを設置する
- 杖やシルバーカー(歩行器)を使用する
- 膝装具を使用する
- インソール(靴の中敷き)を使用する
- 膝関節周囲の筋力を鍛える
- 体重が増えないような食習慣を心がける
- 体重が増えないよう散歩やエアロバイク、水中ウォーキングなどを行う
といったことになります。
中でも即効性のあるものにインソールがあります。
整形外科外来でも義肢装具士に依頼してインソール作製することも多いです。
しかし義肢装具士に依頼してインソールを作製すると高額になってしまいます。
そこでまずは市販のものを試してみるようお勧めしています。
インソールを入れることで膝にかかる負担を軽減することができます。
変形性膝関節症の方の靴底を見ると、ほとんどの方が外側の減りが早いです。
これはO脚の影響で足底の外側にばかり負担がかかるためです。
足底の外側に偏って負担がかかると、さらに膝への負担が増してしまいます。
逆に足底への体重の偏りが補正されれば、膝の負担をかなり軽減できます。
インソールを使用することで、足底への体重の偏りを補正し、膝の負担を減らせます。
日本整形外科学会は、インソールよって痛みが緩和され歩行(運動)能力の改善が得られるとして推奨しています。