はじめに
腰痛の患者さんに良く聞かれる質問のひとつに「どれくらいで治りますか?」というものがあります。
しかしこの質問に答えるのは容易ではありません。
腰痛は軽いものであればすぐに治りますが、人によっては生涯治らないこともあります。
治り方には個人差があるため、治る時期の予測が難しのです。
とはいえある程度の目安を示すことは、患者さんを安心させるためには必要です。
不安をかかえていると治りも遅くなってしまうからです。
そこで一般論としてデータに基づいた経過をお伝えすることにしています。
今回は腰痛の経過についてお伝えします。
この記事は次のような方にオススメです
□腰痛がどのくらいで治るのか知りたい!
□この記事を読めば腰痛が治るまでの経過を知ることができるようになります
急性腰痛、慢性腰痛、非特異的腰痛、妊娠中の腰痛に分けて解説します。
急性腰痛の経過
急性腰痛の人を調べたところ、痛みのスコア(最大で100)が平均して52あったものが
6週間(約1カ月半)➡23
26週間(約半年)➡12
52週(約1年)➡6
になっていました。
最初の6週間で痛みが半減し、その後も時間とともに痛みが減っています。
つまりはじめの1カ月半で痛みが楽になるようであれば経過良好となりやすいです。
慢性腰痛の経過
急性腰痛の人と同様の方法で慢性腰痛の人を調べたところ、痛みのスコアが平均51あったものが
6週間(約1カ月半)➡33
26週間(約半年)➡26
52週(約1年)➡23
と痛みが残りやすい傾向にあります。
初めの1カ月半で痛みが6~7割程度残っているようだと、1年後も痛みがあまり変わりなく残っている可能性が高いということになります。
非特異的腰痛の経過
非特異的腰痛と診断された人は
3カ月後で77%の人に腰痛残存
1年後でも65%の人に腰痛残存
していました。
非特異的腰痛の場合、大部分の人が改善しないことが分かりました。
妊娠中の腰痛の経過
妊娠中に腰痛となった639名を調べたところ、産後6カ月で176人(27.5%)で痛みが残存していました。
産後6カ月で痛みの残存していた176名をさらに産後1年時に追跡調査したところ
腰痛なし34人(19.3%)
反復する腰痛115人(65.3%)
慢性的な腰痛27人(15.3%)
となっていました。
妊娠中に腰痛となった場合、4人に1人は出産後半年しても痛みが残り、そのうち8割の人は産後1年経過しても腰痛が残っているということになります。
腰痛が長引く要因
腰痛が長引く要因として、メンタル面の影響が指摘されています。
腰痛になった人がマイナス思考の場合、12週間後に職場復帰できていない頻度が2倍高かったという調査結果が出ています。
また破局的思考(痛みの経験をネガティブに捉え、痛みが頭から離れなず、痛みを大きく捉え、痛みに対して無力感を感じる思考)の人は、腰痛の治りが悪いことが分かっています。
腰痛に限らず全てにおいて、ネガティブで破局的思考の人は治りが悪い傾向にあります。
腰痛が慢性化したり再発しやすい要因としては
- 肥満
- 喫煙
- うつ状態
- 認知機能障害
- 過去に腰痛を経験している
- 高年齢
- 交通事故で腰痛になった
- 170㎝以上の女性
- 教育レベルが低い
- 仕事で重量物を扱う
- 働き甲斐が低い
- 不定愁訴が多い
といったことが研究で示されています。
腰痛が改善する要因
逆に腰痛が改善しやすい要因も分かっています。
- 運動習慣
- 若年齢
- 健康状態良好
- 身体機能が高い
- 精神状態良好
に当てはまると腰痛は治りやすいです。
さいごに
今回紹介した要因を複合的に考えてある程度の経過を予測できます。
身体面のみならず精神面や生活習慣なども影響するため、様々な視点から経過を予測する必要があります。