こんにちは!

代表理事の保田です。

 

心理的ストレスががんのリスクを

高めるという考えは広く共有されて

います。

 

これまでの科学的研究で、様々な

証拠が示されています。

 

僕自身、悪性リンパ腫が寛解したにも

関わらず、1年半後に再発を経験

しましたが、その原因はストレスの

多い環境で働き始めてしまったからだと

直感的に理解しました。

 

 

この度、Science Translational Medicine誌に

ストレスが休眠状態にある腫瘍細胞を

再活性化させる可能性があることを示す

研究結果が発表されました。

 

手術や抗ガン剤、放射線治療などの

治療でガンが除去された後、

再発してしまうことはガンの主な

死因の一つです。

 

どんなに完璧な治療を行っても

ガン細胞はいくらか残って

しまいます。

 

残ってしまっても、体の免疫細胞

による防御と抗がん剤の効力によって、

ガンの成長を止め、残ったガン細胞を

休眠状態にすることができます。

 

休眠状態の腫瘍細胞は分裂できず、

無害なのですが、ある条件が与え

られると、再び目覚め、成長を

再開してしまいます。

 

細胞分裂が刺激される原因の一つに、

成長因子と呼ばれるものがあります。

 

マウスを用いて行われた新しい研究では、

「線維芽細胞成長因子」と呼ばれる

成長因子が、動物にストレスを与えた後に

産生され、これによって休眠状態にある

ガン細胞が再活性化されることが

分かりました。

 

では線維芽細胞成長因子がストレス

によって産生される原因は何なので

しょうか。

 

これには好中球という免疫を担う

血液細胞が関係しています。

 

本来好中球は感染や病気から

体を守る良い細胞です。

 

好中球は体内を循環している

ストレスホルモンに反応し

病気の脅威に立ち向かうために

プロ炎症性タンパク質というものを

放出します。

 

しかし放出されたプロ炎症性

タンパク質によって脂質が酸化

されると、休眠腫瘍細胞を刺激して

線維芽細胞増殖因子を作り始めて

しまいます。

 

これに反応して休眠腫瘍細胞が

目を覚まし、ガン細胞が分裂を

始めてしまいます。

 

 

このようにして心理的ストレスが

がんの再発を引き起こすことが

解明されました。

 

今後プロ炎症性タンパク質を

阻害する薬剤や、

 

好中球がストレスホルモンを感知する

部位をブロックするような薬剤が

開発されれば、ガンの再発を防止

できるようになるかもしれません。

 

そのような薬剤が開発されるまでは

ストレスにさらされないような

生活を心がけることが重要です。