こんにちは!
代表理事の保田です。
口の中を綺麗に保つ口腔衛生習慣が、認知障害や認知症を予防する可能性があることが、The Journal of Post-Acute and Long-Term Care Medicineに掲載されたNYU Rory Meyers College of Nursingの研究結果で示されました。
研究論文の上級執筆者であるBei Wu氏は、
「毎年、アルツハイマー病や認知症と診断される人の数が驚異的であること、また、口腔内の健康を生涯にわたって改善する機会があることを考えると、口腔内の健康状態の悪さと認知機能の低下との関連性をより深く理解することが重要である」
と述べています。
この研究では、歯の喪失と認知機能障害に関する14件の研究を分析し、合計34,074人の成人と4,689例の認知機能が低下した人を比較し調査しました。
その結果、
他の要因を除外しても、歯の欠損が多い成人は、認知機能障害のリスクが1.48倍、認知症のリスクが1.28倍になることがわかりました。
さらに入れ歯を持っていない場合、認知機能が低下する可能性が高いことも新たな研究で明らかになりました。
アメリカ歯周病学会会長のジェームズ・ウィルソン博士は、
「入れ歯が重要なのは、患者が健康的な食生活を維持できるだけでなく、「自然な笑顔を見せる自信」を与えてくれるからです。普通の食事ができることは、人の体の健康にとって非常に重要なことです。”入れ歯が患者さんに与えるポジティブな自己イメージは、精神的な健康にも効果があります」
と述べています。
健康な脳は健康な口から
歯がないことで咀嚼に影響が出て、健康的な食事の選択肢が狭まり、脳の健康に必要な栄養素が失われる可能性があります。また、今回の分析では、口腔内の炎症が脳の炎症や認知障害につながっているという証拠も浮き彫りになりました。
ウィルソン博士は、
「歯周病による炎症は、心血管疾患、膵臓がん、糖尿病、関節リウマチ、アルツハイマー病などの他の疾患状態と関連しています。」
と述べています。
これまでの研究でも、P. gingivalis(歯周病に関連する細菌)とアルツハイマー病との間に関連性があることがわかっています。
歯周病の原因になる歯周病菌や、菌が放出する物質は、血液の流れにのって全身に回ります。その結果、全身で炎症を引き起こしてしまいます。また歯周病菌や菌の出す酵素という物質は血管や細胞膜を溶かす作用があります。
さらに歯周病菌が作り出す酪酸という脂肪酸の一種は、炎症を誘導したり血液細胞などを酸化させ、老化を早めることが分かってきました。
歯周病は、毎日の歯磨きと歯間掃除、そして歯科での定期健診で予防できます。
歯周病はガンを引き起こす
イギリスで行われた研究で、歯周病がある人はガンになる可能性が14%も上昇することがわかりました。特に上昇率が高かったのは膵ガン54%増、腎癌49%増、肺ガン36%増、血液ガン30%増でした。
歯周病の原因菌の一つであるポルフィロモナス・ジンジバリス ATTC 53978に対する抗体が多い人は、少ない人と比べて膵ガンになるリスクが2.14倍高くなることも分かっています。
10代後半のおよそ7割で歯周病がはじまっているとのデータがあります。
歯周病になっている日本人は、30歳以上では約8割に達します。
あなたもすでになっている可能性があります。
歯周病の予防は毎日のブラッシングと
歯科での定期的なクリーニングです。
歯のクリーニングは口臭や歯の色素沈着予防にもなるのでオススメです。
また喫煙は歯周病の原因になるので禁煙を心がけましょう。
食事の際、よく噛んで食べることで唾液の分泌を増やすことも、口の健康には重要です。
将来のために今のうちからできることはやっておきましょう。
唾液の効能
唾液の主な作用は炭水化物(米、穀物、麺類など)中のでんぷんを分解することです。その他にもさまざまな効能があります。
唾液には抗菌作用のあるヒスタチンなどの物質が含まれており、虫歯や歯周病、肺炎の予防にもなります。
さらにフリーラジカルという発ガン性物質を消去する物質も含まれており、抗ガン作用も期待できます。
また食物をアルカリ性に傾けることで免疫力の低下や、内臓機能の低下などを防ぎます。
食べ物をよく噛んで、唾液をたくさん出しましょう。
肺炎予防にも口腔環境
加齢や障害によって飲み込む能力が低下することで、食べ物や飲み物などが気管に流れこみ、その結果、細菌を肺に運んでしまい誤嚥性肺炎を起こすと考えられています。
しかし実際はむせて食べ物や飲み物が肺に流れるだけでは肺炎を起こしません。
肺炎の原因となる細菌は、実は自分の口の中の細菌なんです。
そのことが認識されてから口の中を清潔に保つことが重要視されはじめ、誤嚥性肺炎の予防に対してある程度の効果が得られました。
しかしそれだけでは不十分です。
なぜなら歯にこびりついている細菌はバイオフィルムと呼ばれるバリアーのようなものを形成しており、いくら口腔ケアをこころがけても細菌を無くすことができないからです。
そこで重要になってくるのが歯科治療による誤嚥性肺炎予防です。
京都病院学会で興味深い発表がありました。
誤嚥性肺炎を繰り返す方に、食物や飲み物の誤嚥を無くす目的で胃ろうを造り、胃に直接栄養剤を注入するようにしたのですが、肺炎は改善しなかったそうです。
つぎに口腔ケアを徹底したそうですが、それでも肺炎は改善しなかったそうです。
見た目を気にされたご家族の希望で、わずかに残っている歯を抜いて、総入れ歯にしたところ、驚くべきことに、肺炎が治ったとのことです。
わずかに残っていた歯に付着していた細菌が、実は肺炎の原因となっていたことが実証されたわけです。
誤解しないようにして頂きたいのですが、誤嚥性肺炎を繰り返す人はみんな総入れ歯にすれば良いというわけではありません。
この発表から歯のケアが重要だということを知ってもらいたいのです。
年に数回定期的に歯のクリーニングを行うことが口腔内の細菌の繁殖を予防することに繋がり、年をとってからの歯槽膿漏予防や誤嚥性肺炎予防になることを認識して頂きたいと思います。
偉そうなことを言っていますが、僕も歯のケアには無頓着でした。特に自覚する歯のトラブルをが
なかったので、歯科へは中学生の時以来行ったことがありませんでした。
しかし抗がん剤治療の副作用で口腔内のトラブルが多く出現したのをきっかけに歯科受診をしたところ、歯石が沈着し、歯槽膿漏になる危険性が高いことがわかりました。
それ以降は3ヵ月に1回検診とクリーニングをしてもらい、健康な歯茎を取り戻しました。