- 腰痛がなかなか治らない
- 医療機関で調べても腰痛の原因がはっきりしない
と悩んでいませんか?
実は原因のはっきりしない腰痛の7割は、心に原因があります。
なぜならば心と痛みには強い関係性があるからです。学校に行きたくない子供が「お腹が痛い」と訴えるのが良い例です。
心と腰痛の関係性については、日本整形外科学会が作成している『腰痛診療ガイドライン』にも明記されています。
僕自身、思い通りに働くことができないストレスによって腰痛になった経験があります。
この記事を読めば、心と腰痛の関連性を医学的根拠にもとづき理解することができます。
痛みは心からのメッセージ
腰痛で受診する人がたくさんいますが、患者さんも医師も痛みのある部位に原因があると思いがちです。
しかしそれでは真の原因を見落としてしまう可能性があります。
なぜならば痛みのある部位とは無関係な部位に原因があることが多いからです。
例えば腰椎椎間板ヘルニアは、腰ではなくスネやふくらはぎ、足などに痛みが出ることが多いです。
腰痛の根本原因が、肩関節や足首の異常にあることも多々あります。
それにも関わらず、多くの医師が腰のレントゲンを撮って、「腰のこの部分が変形していることが原因です」などもっともらしい説明をします。
腰の変形があっても腰痛がない人はたくさんいるので、変形が原因とは断言できません。
いっぽう東洋療法の先生は体を全体を診るのが上手なので、根本原因となっている場所を見つけ出し腰痛を治すことに長けています。
僕の友人はひどい腰痛で苦しんでいましたが、あん摩マッサージ指圧師の先生に診てもらったところ「肩が原因だね」と言われ、腕をグルっと回されただけで治ったそうです。
このように腰痛はとても奥深いため治療に苦労します。
さらに治療に苦労する要因が、心の問題が原因で腰痛になる点です。
近年心と痛みが関係していることが医学的に証明されてきました。
職場の腰痛と心の関係
仕事に関係した腰痛を調査した研究で、心理面の影響で腰痛が治りにくくなったり長引いたりすることが明らかになっています。
文献
Waddell G, et al. Occupational health guidelines for the management of low back pain at work: evidence
review. Occup Med (Lond) 2001; 51: 124.
腰痛が 3 ヵ月以内に起こった人を調べた研究では、腰痛の治りにくさに影響するのは、
- うつ
- 仕事上の問題
- 仕事上の不満
などをあげています。
文献
Kent PM, et al. Can we predict poor recovery from recent-onset nonspecific low back pain? A systematic review. Man Ther 2008; 13: 12.
こちらもご参考に↓
急性腰痛が非特異的腰痛になる心理的な要因
急性腰痛から非特異的慢性腰痛への移行にかかわる心理面の要因を分析した研究があります。
その結果
- 補償問題の存在(休業補償など)
- うつ
- 心理的苦痛
- 受動的コーピング(解決に対して受け身)
- 恐怖回避思考(痛みに対する恐怖から動くことを避けてしまう)
などが要因として確認されました。
文献
Ramond A, et al. Psychosocial risk factors for chronic low back pain in primary care–a systematic review. Fam Pract 2011; 28: 12.
非特異的腰痛に破局的思考が与える影響に関する研究では、
- 腰痛の強度・持続
- 腰の機能障害
- 治療効果
に影響することが分かりました。
破局的思考とは「どうせすべてはダメになってしまうんだ」という考えです。腰痛における破局的思考としては、「腰痛のせいで働けなくなって、もう私の人生がダメになってしまうんだ」という感じです。
文献
Wertli MM, et al. Influence of catastrophizing on treatment outcome in patients with nonspecific low back pain: a systematic review. Spine (Phila Pa 1976) 2014; 39: 263.
また破局的思考は、急性期、亜急性期、慢性期いずれの時期においても腰痛の強度や機能障害に影響したとする報告もあります。
文献
Wertli MM, et al. Catastrophizing-a prognostic factor for outcome in patients with low back pain: a systematicreview. Spine J 2014; 14: 2639.
恐怖回避思考が非特異的腰痛の治りにどう影響するかについて調べた研究があります。
恐怖回避思考とは痛みに対する不安や恐怖から身体活動を過剰に制限することです
亜急性腰痛(発症 4 週~3 ヵ月)において恐怖回避思考が復職不能や病欠の危険性を上昇させ、治りが悪くなる要因になることが分かりました。
文献
Wertli MM, et al. The role of fear avoidance beliefs as a prognostic factor for outcome in patients with nonspecific low back pain: a systematic review. Spine J 2014; 14: 816.
慢性腰痛と心の関係
急性または亜急性腰痛が慢性腰痛に移行する心理的な要因についての研究では
- 苦悩
- 抑うつ
- 身体化(心の問題が体の症状として現れること)
が関係していました。
文献
Pincus T, et al. A systematic review of psychological factors as predictors of chronicity/disability in prospective cohorts of low back pain. Spine (Phila Pa 1976) 2002; 27: 109.
腰痛の心理的影響チェック「BS-POP」
腰痛の患者さんに心が影響していないかをチェックする方法としてBS-POPという質問票があります。
患者さん自身が回答する質問票と、医師が評価する質問票があり、両方の結果を総合的に判断します。
ここでは患者さん自身が回答する質問票をご紹介します。
質問は全部で10個あります。
①~⑥は、「いいえ=1点」「時々=2点」「いつも、ほとんど=3点」です。
①泣きたくなったり泣いたりすることがある
②いつもみじめで気持ちが浮かない
③いつも緊張してイライラしている
④ちょっとしたことがしゃくにさわって腹が立つ⑤なんとなく疲れる
⑥痛み以外の理由で寝つきが悪い
⑦~⑩は、「いいえ=3点」「時々=2点」「いつも、ほとんど=1点」です。
⑦食欲はふつう
⑧1日の中では朝方が一番気分がよい
⑨いつもとかわりなく仕事がやれる
⑩睡眠に満足できる
腰痛があって合計点が15点以上あれば、専門医による治療を検討してください。
さいごに
腰痛に対しては体のみならず心にも目を向ける必要があります。
幸い今回紹介したように、心が腰痛に影響することが医学的に証明されています。
日本整形外科学会が作成した『腰痛診療ガイドライン』にも明記されています。
この記事が腰痛の原因を知る助けになれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました!