腰痛は2つに分類できます。
それは
- 原因のはっきりしている腰痛
- 原因不明の腰痛
です。
原因のはっきりしている腰痛とは、診断法や治療法が確立されてるもので、椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍、尿路結石などがこれに分類されます。
いっぽう原因不明な腰痛は、診断・治療ともに不十分な手法しかないもので、筋・筋膜由来、椎間板由来、椎間関節由来、心因性のものなどがこれに分類されます。
原因不明な腰痛は非特異的腰痛と呼ばれます。
日本の整形外科専門医による調査では、腰痛の原因は
- 非特異的腰痛 22%
- 椎間関節性 22%
- 筋・筋膜性 18%
- 椎間板性 13%
- 脊柱管狭窄症 11%
- 椎間板ヘルニア 7%
- 仙腸関節 6%
となっていました。
筋・筋膜由来、椎間板由来、椎間関節由来を含めると75%が非特異的腰痛であることが分かります。
現段階で解明されている腰痛のメカニズムについて解説します。
腰の骨(腰椎)の変形
レントゲンでの腰の骨(腰椎)の変形と腰痛の関連を調べた研究を集めて解析したところ、腰椎と腰椎の間(椎間板が存在する場所)がレントゲンで狭くなっていると腰痛が出やすいことが分かりました。
またMRIでの変化と腰痛の関連を調べた研究では、椎間板が変化したり分離症があったりすると腰痛が出やすいことが明らかになりました。
腰の動き
腰の動きが硬くなると腰痛になる可能性が、多くの論文を解析した結果示唆されています。
腰の動きが悪くなると腰椎や椎間関節、椎間板などに負担がかかりやすくなり、腰痛が出ると考えられます。
遺伝性
遺伝的な要因がないかを調べるために双子を調査した結果、何らかの障害がある腰痛や慢性腰痛では遺伝的な要素があることが分かりました。
脳の変化
痛みを認識するのは脳です。そのため腰痛のメカニズムに脳も関連しています。
慢性的な腰痛がある人の脳をMRIで調べると、白質(神経細胞の細胞体が存在している部位)・灰白質(神経線維が多く存在している部位)の量が変化していたり、痛みを処理したり感情に関連したりする領域に変化が起こっていることが分かりました。
内側前頭前皮質、帯状皮質、扁桃体、島の活動が活発になることや、感覚運動統合領域の活動が活発になることが分かっています。
内側前頭前皮質は刺激・報酬などに関連する部位、帯状皮質は報酬予測や感情などに関連する部位、扁桃体は恐怖や不安などの感情に関連する部位、痛みの感覚や感情に関連する部位です。
痛みが感情と関係するのは理解しやすいと思います。痛みは恐怖や不安など負の感情を呼び起こします。理解しにくいのは報酬と関連している部位の活動が活発になる点だと思います。これはマゾヒズムのような性的倒錯やリストカットを繰り返す人をイメージすると理解できるかと思います。
また脳と腰痛の関係を調べた面白い実験で、腰痛を経験したことがある人は重たい物を持つ映像を見るだけでも、脳の痛みを感じる領域に変化が起こることが分かっています。
以上のことより腰痛のメカニズムには脳も影響していることが分かります。
精神面
精神面の影響で、腰痛を含めて全身に痛みを訴える病気があります。このような病気を身体表現性障害といいます。
慢性腰痛647例を調べたところ、25.2%が全身に痛みを訴えていたとの研究結果があります。
特に女性、精神症状がある人、併存する病気がある人で多く認めていました。
精神面と腰痛の関係性はすでに解明されてきています。
通常であれば腰から痛みの信号が脳に伝わると、脳からドーパミンという神経伝達物質が放出されさらにμオピオイドという物質が放出されます。
μオピオイドはセロトニンやノルアドレナリンという神経伝達物質を放出させて、痛みの信号が脳に伝わるのをブロックします。
その結果、痛みが和らぎます。
しかしストレス、うつ、不安などがあると、脳でドパミンが放出されにくくなってしまい、腰痛を感じやすくなります。
このように精神面と腰痛には密接な関係があります。
さいごに
腰痛は多種多様なメカニズムによって起こります。
それだけに治すのも一筋縄ではいきません。
腰痛は整形外科だけで治療するのではなく、精神科や心療内科の医師、看護師、理学療法士、社会福祉士などが協力することで良くなることが多いです。
多職種が連携して治療を行う医療をリエゾン(=連携)医療といいます。
近年リエゾン医療を行うことで医療機関が徐々に増えています。
リエゾン医療による腰痛治療の国内でのさきがけは福島県立医科大学附属病院整形外科です。
なかなか治らない腰痛に苦しんでいるのであれば、リエゾン医療を取り入れている医療機関での治療を検討してみてください。
腰痛がつらい時期は
【腰椎コシビシベルト】のようなコルセットを使って負担を軽減するようにしましょう!