音楽によるリラックス効果

ブリティッシュアカデミーオブサウンドセラピー(BAST)による新しい研究では、良好な精神的健康を維持するために、毎日78分間の音楽を聴くことが推奨されています。

研究の結果、音楽が感情に与える最大の利点は、リラクゼーションであることが分かりました。参加者の90%に音楽でのリラックス効果を認めたと報告しています。

他にも

82%が幸福度を高め、

47%が音楽が悲しみを乗り越えたと主張し、

32%が集中力を向上させ、

28%が怒りに対処するために音楽をうまく使った

と答えました。

音楽を聴く時間の最適な量は1日78分ですが、1日平均わずか11分でも治療上の利点が得られます。

幸福感を高めるためにわずか5分間の音楽でもよいです。

BASTの研究者であるLyz Cooper氏は

「音楽には心と体に影響を与える特性があります。さまざまな感情を引き起こす音楽を聴く時間を作ることは、私たちの幸福に非常に有益な影響を与える可能性があります。幸せな歌を聴くと、報酬に関連する脳の領域への血流が増加し、恐怖に関連する脳の一部である扁桃体への血流が減少することが分かっています」

と述べています。

音楽で感情コントロール

感情のコントロールは、心の健康と幸福に不可欠な要素です。実際に感情のコントロール機能が低下すると、様々な精神疾患(双極性障害、境界性人格障害、心的外傷後ストレス障害など)になりやすいことが分かっています。

感情をコントロールするのに有効な手段のひとつに音楽を聴くというものがあります。

オランダのラドバウド大学ナイメーヘン校、ノルウェー科学技術大学(NTNU)、ドイツのアーヘン大学病院の研究者らは、短期間の音楽トレーニングが感情のコントロールに及ぼす影響を調べる研究結果を、BMC Neuroscience誌に掲載された論文で発表しました。

研究では、不快な臭いを嗅いだときに生じるネガティブな感情が、音楽によって軽減するかを検証しています。

1日2回、3週間にわたって音楽を聴くことで、悪臭によって誘発されるネガティブな感情を軽減することができました。

音楽はウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)を向上させ、外部刺激によって誘発されたネガティブな感情を調整するのに役立つ可能性があります。

せん妄予防に音楽

インディアナ大学医学部のICU(集中治療室)医師ババール・カーンは、せん妄の研究を行っています。

せん妄は、突然発生して変動する精神機能の障害で、通常は回復可能です。 注意力および思考力の低下、見当識障害、覚醒(意識)レベルの変動を特徴とします。 多くの病気、薬剤、毒物などが、せん妄の原因になりえます。MSDマニュアル家庭版より引用

せん妄はICUで人工呼吸器を付けている患者さんの約70~80%に認めます。

せん妄は入院期間を長期化させるだけでなく、長期的な認知機能の低下につながる可能性があります。

カーン医師がせん妄を緩和するために音楽を使用する研究を行った結果、リラックスしたスローテンポのクラシック音楽によって、せん妄日数が減少することが分かりました。

これは音楽が医学的治療法としてエビデンスがあることを証明した新しい研究の一つです。

欧米では何世紀にもわたって音楽を癒しに利用してきています。音楽が医学的に治療効果があるとする証拠はまだ限られていますが、近年研究が増えてきており、音楽の健康効果がますます期待されるようになってきています。